研究分野
数理情報学
研究内容
幾何学が応用される場面ということを考えてみると、コンピュータグラフィックス、ロボティックス、物体認識など、 様々な幾何における基本的な考え方から高度な概念までを必要とする多くの分野が存在していることに気がつきます。 また、情報の世界における情報間のつながりや距離など、情報自体の幾何学的な構造を考察することも、 意味のあることであると認識されるようになってきました。以下では、このような幾何構造に関する研究と、 それらに関する計算機を用いた研究に関して簡単に紹介します。
1. 幾何構造の視覚化に関する研究
「幾何」という言葉からふつうに連想されるものとしては、3角形や4角形など、単純な平面上の図形が典型的なものだと いえるでしょう。しかし計算機の発達により、それまでは想像すらできなかった複雑で美しい図形があることがわかりました。 例えば「フラクタル図形」と呼ばれるものがそれにあたります。
さらに、計算機を用いて数学的な「実験」を行なうことにより、新たな予想を立てたり、問題の反例を探索するなど、 古典的な「紙とエンピツ」とはやや異なったスタイルの研究も盛んになってきました。このようにして計算機の応用領域が 広がることは、計算機科学にとっても大切なことであると思われます。
最近の研究としては、「1点穴あきトーラスのタイヒミュラー空間のベアス埋め込みの計算機による描画」を、 大阪市立大学の小森洋平氏・京都大学の須川敏幸氏・本学科の和田昌昭氏らとの共同で行ないました。ここで今述べた専門用語の 解説をする余裕はありませんが、この研究は、この概念を導入した数学者ベアスによって、1972年に 「残念ながら描画を行なう方法は知られていない。1点穴あきトーラスの場合でも手に負えない」と言われた問題の (1点穴あきトーラスというものの場合の)解決で、 作成した画像 は、関連研究などで引用もされています。
2. 円周上の点の配置をすべて集めてできる空間に関する幾何構造の研究
意味がよくわからない表題ですが、「円周上の点の配置」というのは、円周の上に例えば5つの点が適当に置かれている状態で、 どの場所に置くかによって、無限通りの「円周上の点の配置」が考えられます。まずそもそも何かこのようなものを対象にものを 考えるというのはとても特殊なことをしているという印象を持たれると思うのですが、これは超幾何関数論や、代数幾何学などに 現れる重要な対象で、とても深い研究がなされている同時に、ある種の複素関数により平面上の多角形とも関連づけられる 基本的な「図形」です。
さて、続いて表題の「…をすべて集めてできる空間」ですが、これは「円周上の点の配置」という(やっぱり変な?)幾何的な 「図形」を全部集めてきた集合です。そのような図形たちの社会に、お互いに似ているとか似ていないという距離を うまく考えてやることによって、これら幾何的な図形の社会自体の幾何学的構造を考えたというのが、表題の最後の 「…に関する幾何構造の研究」です。
この「ある種の形の世界」の形を、増田寛之さん(東京工業大学:当時)による プログラム で見ることもできます。なお、この研究は東京工業大学の小島定吉氏、九州大学の西晴子氏との共同研究です。
主な論文と著書
- Y. Yamashita, H. Nishi and S. Kojima: Configuration spaces of points on the cricle and hyperbolic Dehn fillings II, Geometry Dedicata (to apear).
- S. Kojima, H. Nishi and Y. Yamashita: Configuration spaces of points on the cricle and hyperbolic Dehn fillings, Topology Vol. 38, (1999) No. 3, 497-516.
- M. Wada, Y. Yamashita and H. Yoshida: An inequality for polyhedra and ideal triangulations of cusped hyperbolic 3-mainfolds, Proc. A. M. S., Vol. 124 (1996) No. 12, 3905-3911.
- 落合豊行、山田修司、山下靖: 結び目理論研究支援用システムの設計, 日本応用数理学会、Vol.4 (1994) No.4, 337-348.
- W. P. サーストン著 S. レヴィ編 小島定吉監訳(共訳): 3次元幾何学とトポロジー,培風館 (1999).
関連リンク
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