研究分野
数理生態学,フラクタル幾何学
研究内容
魚の左利き右利き(口が左に開くか,右に開くか)の割合の変化について数式を使ったモデルを作り、 コンピュータシミュレーションなどで調べています。
アフリカのタンガニイカ湖に棲むスケールイーター(鱗喰い)には、口が左に開く左利きと、右に開く右利きの個体が存在し、 年によって左利きが多かったり右利きが多かったりと左右の比率が振動しています。これは、左利きが多い年には襲われる魚が 左利きを警戒し、右利きの方がより餌を食べて多くの子供を残し、その子供が成長すると左右の比率が逆転するというプロセスで 生じています。その後スケールイーター以外の魚でも左右性があり、比率が振動していることがわかってきました。 魚の種間の多様な関係が左右性のダイナミクスにどのような影響を及ぼすか、逆に左右性の比率の振動が群集のダイナミクスに どう影響するかを数理モデルを使い、理論的に調べています。
アフリカのほぼ中央にあるタンガニイカ湖にはスケールイーターという鱗を食べて生きている魚がいます.
下の写真は子育てをしているスケールイーターです.
スケールイーターには個体によって右に口が開く右利きと,左に口が開く左利きとがいます. 下のスケールイーターの標本の写真の上が右利き,下が左利きの個体になります.
この現象を,スケールイーターを成熟した魚で左利きの遺伝子を2つ持つもの(L),左利きと右利きの遺伝子を 1つずつ持つもの(H),右利きの遺伝子を持つもの(R),および1才のそれぞれ対応するもの(L1, H1, R1)に分けて考え, モデルを作ります.右利きと左利きの遺伝子が1つずつのときは右利きになります.左利きが多い年は, 餌の魚が左利きのスケールイーターを警戒するため,左利きはあまり子供を残すことができません.
実際の観測データでは周期は約5年で,モデルの予測の4年から6年というのとよくあっています. 実際の観測データとモデルのシミュレーションのグラフを以下で比較しました.
主な論文と著書
- A. Iwasaki, S. Takahashi, T. Yamakura, M. Kanzaki, A. Itoh, T. Ohkubo, K. Ogino, E. O. K. Chai, H. S. Lee and P. S. Ashton, Fractal dimension of the spatial distribution of Dryobalanops lanceolata in a tropical rain forest, at Lambir, Sarawak, Tropics 7 (1997) 1-8.
- 高橋智,「Macintosh ではじめる C」,牧野書店,1996年.
- S. Takahashi and M. Hori, Unstable evolutionarily stable strategy and oscillation -- a model of lateral asymmetry in scale-eating cichlids, American Naturalist 144 (1994) 1001-1020.
- Y. Yasui and S. Takahashi, Unstable geodesics and topological field theory, J. Math. Phys. 35 (1994) 4547-4567.
- S. Takahashi, A variational formula for dimension spectra of linear cellular automata, J. Analyse Math. 64 (1994) 1-51.
- 釜江哲朗,高橋智(共著),「エルゴード理論とフラクタル」,シュプリンガー・フェアラーク東京,1993年.
- 高橋智,セルオートマトンにおけるカオスとフラクタル,合原一幸(編著),「カオス」,第8章(258頁−288頁), サイエンス社,1990年.
関連リンク
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