情報科学科

新出 尚之

にいで なおゆき

研究分野

数理論理学、論理プログラミング

研究内容

記号論理学の中の一分野、論理プログラミングを研究分野としています。現在は、論理プログラミングによる合理的エージェントの実現をテーマとして研究を行っています。

記号論理学は、我々が行う推論の過程を記号化して捉えるものです。例えば、推論の際に用いる基本的な推論規則として、“p”と“pならばq”から“q”を導く「三段論法」があります。これは、“pならばq”を「p→q」と表すことにすると、2つの記号列「p」と「p→q」から「q」を導く操作と捉えることができます。

記号化することの利点の1つは、記号列に対する操作は計算機に行わせやすいという点です。実際、このようにして、計算機に自動推論を行わせることができます。

また、“xのy乗はzである”を「exp(x,y,z)」と表し、2つの記号列
exp(x,0,1) …(A)
exp(x,y,z)→exp(x,y+1,x×z) …(B)
を計算機に与えておくと、計算機は(A)のxに3を代入したexp(3,0,1)と(B)から、上記の三段論法でexp(3,1,3)を導き、さらにそれと(B)から同様にexp(3,2,9)を導き…というように、3の累乗を次々計算できます。このように、計算の過程を推論で実現できるというのが「論理プログラミング」の基本的な考え方です。

現在の私は、論理プログラミングの考え方を用いて、周囲の状況を認識しながら、その時々に応じて自らの目標を設定して動作する、人間の代理エージェントのソフトウェア的実現に向けた研究を行っています。このためには、エージェント(あるいは人間)の心的状態(目標・信念など)、あるいはその時間的変化を記号で表現できるように、論理学を拡張しておくと好都合です。

例えば“あることがら(pとする)の達成を目標とする”を「Goal(p)」と表し、“pが次の時刻(例えば1分後)に成り立つ”を「Nexttime(p)」と表すことにすると、“次の時刻にpを達成することが目標ならば、今qを実行する”は「Goal(Nexttime(p))→q」と表せます。

このように拡張すると、推論規則として三段論法だけでは不十分です。どのような推論規則を加えれば、心的状態や時間を含む推論が的確に行えるのかを、現在考えています。
また、機械的な推論だけでは、人間の代理をやらせるにはどうしても不十分な面が出てくるので、学習などの機構を使って補うことも、これから始めていこうと考えています。

その他

オープンソース・ソフトウェアとは、ソースコード(プログラミング言語で記述された、人間にとって可読なプログラム)を公開し、誰でも開発(拡張や不具合修正など)に参加できるようにしたソフトウェアのことで、広く使われているものがいろいろあります。 私もそれらのソフトのいくつかに対する修正差分(パッチ)を公開したり、自作のソフトのソースを公開して、そうした活動に微力ながら協力しています。 自作のものは、情報科学科のFTPサイトで公開中(下記参照)。パッチを出したものには、GNU awk, SWI-Prolog, plain2, kemacs, mnews, Jasonなど、UNIXで(ものによってはWindowsでも)広く使われているものがいろいろあります。

主な論文と著書

著書
  1. 加藤・高田・新出, 「数理論理学―合理的エージェントへの応用に向けて―」, コロナ社, 2014/10 (出版社のページ)
論文
  1. N.Nide, Y.Goto, M.Fujita, `Sequent calculus for 3-valued paraconsistent logic QMPT0', Logic Journal of the IGPL, Vol.27, No.4, pp. 507-521, 2019/8 (概要)
  2. Y.Goto, M.Fujita, N.Nide, `Implementation of 3-valued paraconsistent logic programming towards decision making system of agents', Journal of Systems Science and Systems Engineering, Vol.27, No.3, pp. 322-339, 2018/5 (概要)
  3. M.Fujita, Y.Goto, N.Nide, K.Satoh, H.Hosobe, `Toward a robot that acquires logical recognition of space', Information Engineering Express, Vol.3, No.4, pp. 1-10, 2017/12 (全文PDF)
  4. N.Nide, S.Takata, `Tracing Werewolf game by using extended BDI model', IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E100-D, No.12, pp. 2888-2896, 2017/12 (概要)
  5. 新出・高田, 「信念と状態遷移を確率的に扱う合理的エージェント向け論理」 電子情報通信学会論文誌, Vol.J98―D, No.6, pp. 936―947, 2015/6 (概要)
  6. 新出・高田・藤田, 「連続した状態空間での合理的エージェントの行為を扱う論理モデルの試み」, 電子情報通信学会論文誌, Vol.J96―D, No.12, pp. 2239―2250, 2013/12 (概要)
  7. 藤田・片山・新出・高田, 「実世界の多様性に適応したBDIロボットについて」, 情報処理学会論文誌 数理モデル化と応用, Vol.5, No.1, pp. 50―64, 2012/3 (全文PDF)
  8. 新出・高田・藤田, 「拡張BDI論理TOMATOを用いた確率的状態遷移のモデル化とその応用」, 情報処理学会論文誌 数理モデル化と応用, Vol.4, No.3, pp. 59―72, 2011/7 (全文PDF)
  9. 新出・高田・藤田, 「拡張BDI論理TOMATOesによる協調行為のモデル化と応用」, 人工知能学会論文誌, Vol.26, No.1, pp. 13―24, 2011/1 (全文PDF)
  10. 高田・新出・藤田, 「拡張BDI論理TOMATOesを用いた強化学習のモデル化について」, 人工知能学会論文誌, Vol.26, No.1, pp. 156―165, 2011/1 (全文PDF)
  11. 櫟・高田・新出, 「BDIアーキテクチャにおけるコミットメント戦略を実現するための形式的検証手続き」, 電子情報通信学会論文誌, Vol. J89-D No.6, pp. 1213―1224, 2006/6
  12. 新出・高田・櫟, 「エージェントの相互信念を扱う拡張BDI logicの演繹体系」, 情報処理学会論文誌 Vol.46, No. SIG2(TOM11) pp. 85―99, 2005/1 (全文PDF)
  13. 新出・高田・櫟, 「合理的エージェントの心的状態に関する整合性の実現と応用について」, 電子情報通信学会論文誌 Vol.J86-D-I No.8 pp. 514―523, 2003/8 (概要)
  14. 新出・高田, 「BDI Logicのsequent calculusによる演繹体系」, コンピュータ・ソフトウェア Vol. 20 No.1 pp. 66―83, 2003/1 (全文PDF)
  15. Takata, Igarashi, Nide, Enomoto, Mase and Nakatsu, `Design of Rational Agents for Performing Speech Acts Intentionally in Multiagent Environment', Systems and Computers in Japan, Vol. 34, No. 8, pp. 77―88, Wiley Periodicals, 2003
  16. 高田・五十嵐・新出・榎本・間瀬・中津, 「マルチエージェント環境において意図的に言語行為を遂行する合理的エージェントの基本設計」, 電子情報通信学会論文誌 Vol.J84-D-I No.8 pp. 1191―1201, 2001/8
解説記事
  1. 新出, 「自律エージェントの論理モデル」, 人工知能学会誌 Vol.25, No.3, pp. 419―428, 2010/5 (全文PDF)
  2. 新出・高田, 「意図に関する論理体系」, 人工知能学会誌 Vol.20, No.4, pp. 425―432, 2005/7 (全文PDF)
  3. 高田・新出, 「意図に基づくエージェントアーキテクチャ」, 人工知能学会誌 Vol.20, No.4, pp. 433―440, 2005/7 (全文PDF)
国際学会
  1. N.Nide, S.Takata, `Tracing Werewolf game by using extended BDI model', Proc. of 2016 International Conference of Agents (IEEE ICA2016), pp. 7--12, 2016/9 (全文PDF)
  2. M.Fujita, Y.Goto, N.Nide, K.Satoh, H.Hosobe, `Autonomous control of mobile robots using logical representation of map and inference of location', Proc. of 2016 International Conference of Agents (IEEE ICA2016), pp. 78--81, 2016/9
  3. M.Fujita, Y.Goto, N.Nide, K.Satoh, H.Hosobe, `Logic-based and robust decision making for robots in real world', Proc. of AAMAS '14, pp. 1685―1686, 2014/5 (全文PDF)
  4. M.Fujita, Y.Goto, N.Nide, K.Satoh, H.Hosobe, `An architecture for autonomously controlling robot with embodiment in real world', Proc. of Knowledge Representation and Reasoning in Robotics (workshop at ICLP 2013), pp. 59―71, 2013/8 (全文PDF)
  5. M.Fujita, H.Katayama, Y.Ojima, N.Nide, `Importing dynamic planner to BDI agent creating flexible decision-making of policies for selecting robot actions in real world', Proc. of AROB 17th 2012, 2012/1
  6. NIDE,N., S.Takata, M.Fujita, `BDI logic with probabilistic transition and fixed-point operator', Proc. of CLIMA '09, pp. 71―86, 2009/8 (全文PDF)
  7. NIDE,N., S.Takata, `Deduction Systems for BDI Logics Using Sequent Calculus', Proc. of AAMAS '02, pp. 928―935, 2002
  8. NIDE,N., S.Takata, T.Araragi, `Deduction Systems for BDI Logics with Mental State Consistency', Proc. of CLIMA '02, pp. 123―135, 2002
  9. T.Araragi, S.Takata, N.Nide, `A verification method for a Commitment Strategy of the BDI Architecture', Proc. of CLIMA '02, pp. 109―122, 2002
国内学会(フルペーパー査読のもの)
  1. 新出・後藤・藤田・高田, 「ノイズを伴う基本行為による目標達成能力の形式的な保証」, Proc. of JAWS2015, 2015/10 (全文PDF)
  2. 藤田・後藤・新出・佐藤・細部, 「地図の論理的表現と推論による位置把握を用いた、移動ロボットの自律的制御手法の開発」, 第20回ロボティクスシンポジア論文集, 2015/3
  3. 新出・高田, 「信念と状態遷移を確率的に扱う合理的エージェント向け論理」, Proc. of JAWS2014, 2014/10 (全文PDF)
  4. 新出・高田・藤田, 「連続した状態空間での合理的エージェントの行為を扱う論理モデルの試み」, Proc. of JAWS2012, 2012/10 (全文PDF)
自分が筆頭のものについては、全文あるいは概要をここに順次掲載していく予定です。また、それ以外でも論文全文が一般に公開されているものについては、論文へのリンクを設けていく予定です。今後順次作業します。

関連リンク

連絡先

住所 〒630-8506  奈良市北魚屋西町
奈良女子大学 生活環境学部 情報衣環境学科 (2014年度から)
同・理学部 情報科学科 (2013年度まで)
電話 0742-20-3555
FAX 0742-20-3555
E-mail nide at mark ics. nara-wu. ac. jp
居室 G409


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